あとがき
私は以前、会社員でした。ご他聞に漏れず、やはり毎月、毎年設定される売上げ目標に追われてながらも、
その目標を達成する事に喜びも感じていました。
しかし、次第に景気が悪くなり、業績も上がらないと、次第にストレスがたまっていました。
でも、それが社会で生きると言うことでした。いつしか仕事をとるために平気で嘘を吐き、
大言を吐き、他者をけなし、裏工作を進める。仲間である同僚にでさえ、業績が悪いと厳しく叱責していました。
「私たちは、死ねばどこにいくのか?」その答えとして広まった「六道」において、
その行き先は、生前の行いで決まるとされていました。その最下層は「地獄」。
そして今回、登場していただいた十一面観音様が救いにきてくださる「修羅道」は、
今我々が生きている「人道」のすぐ下の世界。
でも、その境界は、とてもあいまいで、「人道」に生きているつもりでも、すぐに堕ちてしまう世界。
会社員時代の私は、まさに「修羅道」に生きる「鬼」でした。
それゆえに、今回、出てくる十一の鬼たちは、私の分身でもあるのです。
その思いから、執筆中、何度も何度も涙しておりました。
神仏絵師・昌克
2016年9月