木刀を買って、叱られる男子生徒。先生に連れられ、お店に返しにいく。
担任「木刀なんて買うなんて、おまえらは昭和の中学生か!」
土産物屋さんの奥。店番のお婆ちゃんが座ってる。
女子生徒「かのん~、私たちはこっちを見てるね~」
少しの間、一人になりたかったので、ほっとする。
お婆ちゃんが目を上げる。
婆「あんたは、かのんって言うのかい? もしかしたら、観音様から?」
かのん「ううん、ちがうの・・・」食い気味で否定。
婆ちゃんが、じっと見つめてくる。
かのん「うん。観音様が好きだったおばあちゃんがつけてくれたの」
婆「そうかい、そうかい。」
店を出ようとする、かのん。
しかし、思いとどまり振り返る。
かのん「あの・・・」
婆「観音様には、なれないかい?」
驚く、かのん
かのん「だって、私には、誰も救えない。誰も助けられないもの。」
しばらくの間。
婆は、〜大笑い「人を救うだって? 大げさなことを言うねえ」
婆「あんたは、観音経を知ってるかい?」
かのん「うん。少しは」
婆「じゃあ、話が早い。」
婆「確かに、観音経には、色んな災難から救ってくれるって書いてあるけど、そもそも、その災難って、誰のせいだい?」
かのん「誰のせいって・・・?」
婆「誰が、作ったんだい? その災難は」
かのん「えっと。火は、怒りだから・・・」
婆(おや? そこまで理解してるのかい?)表情で表現。
婆「それなら、怒られてる人がいるのは、怒ってる人がいるってことだろ?」
かのん「あ!」
婆「災難は、人間が作ってるのさ」
かのん「う、うん」
婆「あんたは、どうだい?」
かのん「え?」
婆「怒りにまかせて、人を傷つけたことはないかい?」
(お父さんなんて、大嫌い! ほっといてよ!)思い出す暴言。
かのん「・・・」
婆「私が、子供の頃、よく言われたことがある」
「自分がされていやなことは、人にはするな」
婆「私は、それが【観音様】の心だと思うがね」
納得できない、かのん
かのん「じゃあ、怒ったり、欲張ったりするなってこと?」
婆「そんなの無理じゃ」
かのん「じゃあ、どうすれば...」
婆「おたがいさまじゃ」
かのん「?」
婆「誰だって、腹もたつし、欲張りもする。それをやめろとは言わない。人は、弱い者じゃ。でも、その弱さをわかってやれば、少しは、優しくなれないかい?」
かのん「うん・・・」
婆「いくら頑張ってみても、人は誰かを傷つけてしまう。その気は無くてもじゃ」
(おとうさんのバカ!)
婆「あんたに傷つけられた誰かさんは、きっと誰かさんに救われる。」
(ママは、おとうさんを大好きなのよ)
婆「みんな、誰かに愛されておる。」
婆「みんなに観音様がついておる。みんなが観音様なのじゃ」
婆「あんただけが、観音様になる必要はないんじゃ」
婆さんの胸元で泣く、かのん。